民主党部門会【厚生労働部門(第5回)】
社会保障・税一体改革における『医療を取り巻く現状と方向性について』
という議題にて勉強会が開かれました。
主に下記1~3について勉強しましたので、ポイントを記載します。
1.医療提供体制の現状
①医師の数
・我が国の人口千人当たりの臨床医数は※OECD単純平均の約2/3となっている。
→要は医者不足です。
※OECD(経済協力開発機構)はヨーロッパ諸国を中心に日・米を含め30ヶ国の
先進国が加盟する国際機関です。OECDは国際マクロ経済動向、
貿易、開発援助といった分野に加え、最近では持続可能な開発、ガバナンスといった
新たな分野についても加盟国間の分析・検討を行っています。
・近年、医師国家試験の合格者は毎年7,600~7,700人程度であり、死亡等をのぞいても
毎年3,500~4,500人増加。それでも医者の数は足りず、医学部の入学定数を過去最大
規模まで増員中。
・全国的に医者が不足しているが、地域、診察科によって不足の程度が異なっている。
②医療施設および病床の数
・病院数は、平成2年をピークに1割減少。有床診療所は大幅に減少する一方、
無床診療所が増加。病床数は平成4年をピークに減少(H21総数160万床)
※病院とは病床が20以上ある施設、診療所とは19以下のことです。
・人口千人当たりの病床数は、他のOECD諸国に比べて大幅に大きくなっている。
・国際的にみて、病床当たりの職員数と平均在院日数の間には相関がある。
⇒上記①②を簡単にまとめると、日本は医者の数は少ないが、病床(ベット)の数は
とても多い。よって一人の患者に対して診療にかけられる時間がすくないので、
長期入院になってしまい費用も多くかかるということです。
費用(≒保険料)が多くかかるというのが今の日本にとって大きなマイナスなんですよね!
2.医療保険制度の現状
①国民皆保険制度の意義
・日本は、国民皆保険制度を通じて世界最高レベルの平均寿命と保険医療水準を実現
・今後とも現行の社会保険方式による国民皆保険を堅持し、国民の安全安心な暮らしを
保障していくことが必要
★日本の国民皆保険の特徴
⇒国民全員を公的医療保険で保障
⇒医療機関を自由に選べる(税方式採用の海外は医療機関が制限を受けている国もある)
⇒安い医療費で高度な医療(米国では1人当たりの医療費が日本の2倍以上)
⇒社会保険方式を基本としつつ、皆保険を維持するために公費を投入
(平成20年度 保険料48.8% 公費37.1% 患者負担14.1%)
②医療費適正化の取組
・薬価格の是正、医療材料の内外格差の是正や後発医薬品の使用促進などの様々な
取組を通じて、効率的な医療を実現。これらの取組は今後も推進。
・医療提供体制も機能分化、機能連携等により平均在日日数の短縮や受診日数の短縮を
実現している。
③医療費の動向
・日本は諸外国よりも高年齢化率は高いが、医療費は低い状況にある。ただし、高齢化
の進展や、医療の高度化に伴い、医療費は今後とも増大していく見込みである。
・新薬の開発など医療の高度化とともに費用が増加する場合がある。
④厳しさを増す保険財政
・近年、経済情勢の悪化による所得の落ち込みや高齢化等に伴う医療費の増加等により、
各医療保険者の財政状況は非常に厳しくなってきている。
・日本の人口は2004年にピークを迎え、減少局面に入っている。今後総人口の減少よりも
早いペースで15~64歳人口が減少していくことになる見込み
⑤雇用環境の変化
・非正規労働者の数は増加傾向にあり、低所得者も増加している。非正規労働者の一部は
被用者でありながら被用者保険に加入せず国保に加入している。
⑥被用者保険の現状
・被用者保険では、被保険者数や所得が減少する一方、保険給付費や保険料は
上昇している
⑦国民健康保険の現状
・国民健康保険においては、無職者や低所得者が増加し、被保険者の年齢構成も高齢化
している中で、長期療養者が多数加入しているため、医療費負担が被用者保険と比べて
高くなっている。
・厳しい経済状況を反映し、国保の保険料収納率は低下し、滞納世帯数は増加している。
・保険料の負担率も近年上昇しており、特に所得の低い世帯や子どもの多い世帯で負担率
が高い。また、自治体によって負担率にもばらつきがある。
3.社会保障・税一体改革成案における改革項目
・医療提供体制の効率化・重点化と機能強化
・外来受診の適正化等の取組
・介護サービスの改革
・被用者保険の適用拡大と国保の財政基盤の安定化・強化・広域化
・介護保険の機能強化等
・高度・長期医療への対応(セーフティネット機能の強化)と給付の重点化
・総合合算制度の導入
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国民皆保険制度
国民すべてが何らかの医療保険制度に加入し、病気やけがをした場合に
医療給付が得られること。日本の場合、1955年頃まで、農業や自営業者、
零細企業従業員を中心に国民の約3分の1に当たる約3000万人が無保険者で、
社会問題となっていた。しかし、58年に国民健康保険法が制定され、
61年に全国の市町村で国民健康保険事業が始まり、「誰でも」「どこでも」「いつでも」
保険医療を受けられる、国民皆保険体制が確立した。
( 梶本章 朝日新聞記者 )
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